これからミナミヌマエビやヤマトヌマエビ等の飼育を始める人でしたら、まだエビのことをよく分かっていないのが普通ですから、NHKのダーウィンが来たなどの番組を見ていて、エビについてはプランクトンから誕生すると思っている人も多いはずです。
伊勢エビなどはあれだけ大きなエビなんですけど、実は誕生する際にはとても小さなプランクトンが大量に誕生して、その中で生き残った個体のみが立派な伊勢エビに慣れるような仕組みになっていますので、それらの映像を見るとエビはプランクトン・・・。
多分、普通の人ならそのように思うでしょうし、海水と淡水の環境は違いますし、大きさも全然違いますけど、仲間的には同じようなエビであるミナミヌマエビやヤマトヌマエビであっても同じように赤ちゃんはプランクトンから始まると思いますよね。
実際にはどうなのでしょうか?
淡水のエビは種類によってはプランクトン(ゾエア幼生)もありです。
一般的に、海水域でのエビの赤ちゃんはプランクトン、(ゾエア幼生)タイプで生まれてくる種類が多いようなのですが、完全な淡水のエビの場合は、若干話が違ってきていて、通常の親子体と同じような状態でエビの赤ちゃんが誕生するのが普通です。
これは、プランクトンタイプの赤ちゃんでエビが産卵をしようとした場合、相当広い広大な河川とか海のような水域が必要になるためであり、ミナミヌマエビのように完全に純淡水のエビの場合は、そのような産卵方法をして分布先を広げる理由がありません。
逆に、意外にもヤマトヌマエビの場合は、プランクトンタイプの赤ちゃんを大量に生み出して、その赤ちゃんが大きな河川を下って汽水域で大量のプランクトンを食べながら成長をしていき、成長に合わせて分布域を広げていくような仕組みになっています。
大変良く出来た産卵方法なんですけど、どちらにもメリットやデメリットがあります。
プランクトンタイプのエビの赤ちゃんは広大な範囲に移動しやすい。
ミナミヌマエビのように、親の個体と殆ど同じような状態で生まれてくるエビの場合、その生まれた場所付近で成長をしていくことになり、生涯に渡ってそれ程広い範囲で活動することは殆どありませんし、やろうと思っても簡単には出来ません。
基本的にミナミヌマエビの場合は、河川の茂みなどで生息していて、別にそこから活動範囲を大きく広げる理由もないため、人知れず、そっと自然界では生息をしているわけなのですが、ヤマトヌマエビの場合はまたちょっと事情が異なります。
ヤマトヌマエビの場合、ゾエア幼生タイプの産卵方法ですから、大量のプランクトンタイプの赤ちゃんを産卵して、そのゾエア幼生が汽水域の大きめの河川を下りながら成長していき、生息範囲を広げていく戦略を取っています。
その際に、親と同じような赤ちゃんでしたらエビは泳ぐのが得意ではありませんから、殆ど活動領域を広げることが出来ないんですけど、プランクトンタイプでしたら水面付近で漂いながら相当な距離を移動することが出来るわけなのです。
同じようにみえるエビでも全然違う繁殖方法には謎が多い?
ヤマトヌマエビの場合は、そのようにしないと繁殖が出来ない理由があり、あえてゾエア幼生タイプの産卵をしており、ミナミヌマエビの場合は、反対にそれをする必要が無いので、親と同じような姿で最初から生まれていることになるのです。
同じようにみえるエビでも全然産卵方法が違っているのが面白いところなんですけど、飼育と繁殖が容易なのは、親と同じような姿で生まれるエビの方であり、それ故にミナミヌマエビ飼育と繁殖はとても容易になっているといえます。